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ムコ多糖症を知ろう
ムコ多糖症って、どんな病気?01)
ムコ多糖症は先天性の代謝異常疾患です。
生まれつき遺伝子に異常があって、ムコ多糖という老廃物が体の中にたまってしまいさまざまな障害を引き起こす病気です。
ムコ多糖症は、細胞内にあるライソゾームという器官が正常に働かないために起こるので、
ライソゾーム病(日本では難病に指定)の1つに分類されています。
ムコ多糖症の原因は?
私たちの体は細胞で構成されています。細胞の中にはライソゾームという器官があり、酵素のはたらきでムコ多糖を分解しています。
ムコ多糖症は、ライソゾーム内にムコ多糖を分解する酵素がないか、あっても働きが不十分なために起こります。
ムコ多糖の分解に関わる酵素は、わかっているだけで 11種類あります。
どの酵素が欠けても、ムコ多糖は細胞の中にたまってムコ多糖症の原因になってしまいます。
ムコ多糖
体の細胞と細胞をつなぐ粘液状の物質。
ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などがあります。
タンパク質と結合してムコ多糖体という形で血管、臓器、骨、関節、角膜、脳、皮膚、粘膜などに広く存在し、体の水分保持に重要な役割を果たしています。
グリコサミノグリカン(GAG)とも言います。
ライソゾーム
私たちの体には数十兆個もの細胞があります。
細胞は生命体を構成する基本単位で、生きていくために欠かせません。
細胞は核と細胞質、そしてそれらを囲む細胞膜でできています。細胞質の中にはたくさんの小さな器官(細胞小器官)があり、それぞれが重要な役割を担っています。細胞小器官の1つがライソゾームです。
ライソゾームの役割は、細胞内に侵入してきた異物や代謝産物など体に不要な老廃物を酵素で分解すること。いわば有能な〝ゴミ処理工場〟02)と言えます。
ムコ多糖症には7タイプある
ムコ多糖症は、足りない酵素の種類によってI型からⅨ型まで7つのタイプ(病型)に分類されています。
ムコ多糖症の発生率は?
ムコ多糖症は世界では約25,000人(出生)に1人、日本では約5万人(出生)に1人とされる大変少ない病気です。03) 04)
患者さんの数は欧米ではI型が多いのに対して、日本ではⅡ型がムコ多糖症全体の約半数を占め、
次いでI型が15%程度、Ⅲ型、Ⅳ型がそれぞれ10%前後と報告*1されています。04)
*1.2003〜2009年の136例についての分析より。
ムコ多糖症は遺伝するの?05)
なぜ酵素が欠けるのか、それには遺伝子の変異が関係しています。
ムコ多糖症は遺伝性の病気ですが、親が原因となる遺伝子をもつ保因者だからといって必ず発症するわけではありません。
例えば、Ⅱ型以外の病型では、両親がともに症状のない保因者なら、ムコ多糖症の子供が生まれる可能性は4人に1人です。
ムコ多糖症では、
どんな症状が現れるの?
症状は全身に現れます。各病型に共通する症状もあれば、それぞれの病型に特徴的な症状もあります。
また、同じ病型でも症状や進行の程度はひとりひとり違います。
ムコ多糖症ⅣA型
(モルキオ症候群A型)01) 06〜08)
N-アセチルガラクトサミン6-硫酸スルファターゼという酵素が足りないタイプです。
ムコ多糖症Ⅳ型(モルキオ症候群)にはA型とB型*2がありますが、ほとんどがA型で、日本での発生は約60万人に1人06)と報告されています。
*2. B型ではβ-ガラクトシダーゼという酵素が欠けています。
特徴的なのは、骨格の異常
- 生後2〜3年で骨格異常が目立ってきます。
- 知能は正常です。
- 5歳までにアデノイドや扁桃の手術が、10歳までに首、腰、ひざ、下腿(ひざ〜足首)の手術が必要になることがあります。
- 重症例では7〜8歳頃に成長が止まり、10歳代〜20歳代まで生存できないことがあります。
- 軽症型では健康な人に近い寿命を期待できる人もいます。
ムコ多糖症Ⅵ型
(マロトー・ラミー症候群)01) 06) 09)
N-アセチルガラクトサミン4-スルファターゼ(アリルスルファターゼB)という酵素が足りないタイプです。
非常にまれな病気で、日本では8例06)が報告されているだけです。
多彩な症状が全身に・・・
- 知能は正常です。
- 重症型では1歳頃から骨の変形や関節のこわばりが現れ、6〜8歳で身長の伸びが止まってしまいます(身長100cm程度)。
- 重症型では症状は急激に進行し、治療しないと20〜30歳代で死亡することがあります。
- 軽症型では思春期や青年期以降に症状が現れますが、進行はゆるやかで見通しは悪くありません。
まずは検査を01) 04)
ムコ多糖症では、症状も重症度もひとりひとり違います。
X線検査、尿検査、血液検査等が行われ、その結果から診断が下されます。
気になる症状があったら、早めに医療機関を受診して検査を受けることが大切です。
どんな治療を受けるの?
治療法には、症状を抑える方法と酵素補充療法、造血幹細胞移植があります。
早めに治療を始めれば、暮らしの質を上げたり病気の進行を遅くしたりすることができます。
また、医療費助成制度*4により、負担を軽くして治療を受けることができます。
*4. 医療費助成制度:「指定難病」と診断され、「重症度分類等」に照らして病状の程度が一定程度以上の場合、医療費が軽減される制度。
症状を抑える“対症療法”01) 07)
内服や処置、手術等によって症状をコントロールできます。
- 中耳炎:
重症例には換気のため鼓膜チューブが挿入されます。 - 無呼吸、呼吸困難:
アデノイド除去や気管切開が行われます。 - 角膜のにごり:
悪化した場合、角膜移植が行われます。 - 心疾患:
進行に合わせて薬が使われますが、悪化例には弁を置き換える手術が行われます。 -
水頭症*5:
脳にたまった水をカテーテルで他の場所へ逃がすシャント術が行われます。*5. 水頭症:脳に水がたまってくる病気。
酵素補充療法と造血幹細胞移植01)
酵素補充療法
足りない酵素を薬で補って、ライソゾーム内にたまったムコ多糖を分解する方法です。
造血幹細胞移植
正常な造血幹細胞*6を移植し、正常細胞が分泌する酵素をライソゾームに輸送してムコ多糖を分解します。
*6. 造血幹細胞:骨の中心部である骨髄の中で血球(赤血球、白血球、血小板)をつくりだす細胞。
日常生活で気をつけること01) 07)
- 口腔内を清潔に保ちます。
- 風邪は早めに治します。
- 中耳炎を悪化させないように注意します。
- 必要に応じて補聴器を使います。
- 視力障害がある場合、眼鏡やサングラス、ひさしのついた帽子を使用します。
- 適切なリハビリテーションを受けて成長を促します。
参考資料
- 厚生労働省難治性疾患等政策研究事業ライソゾーム病(ファブリー病を含む)に関する調査研究班(研究代表者 衛藤義勝)編集:診断の手引きに準拠したムコ多糖症診療マニュアル, 2016
- 酒井規夫:別冊・医学のあゆみ ライソゾーム病のすべて:9-12, 2019
- 戸松俊二, Adriana Maria Montaño:ムコ多糖症UPDATE:68-70, 2011
- 濱崎考史:別冊・医学のあゆみ, ライソゾーム病のすべて:127-133, 2019
- 田中あけみ監修:ムコ多糖症患者親の会 website, ムコ多糖症
http://www.mps-japan.org/whats/ - 折居忠夫総監修:ムコ多糖症UPDATE, ムコ多糖症(まとめ):2011
- 戸松俊治,鈴木康之:ムコ多糖症UPDATE:119-130, 2011
- 鈴木康之:ムコ多糖症UPDATE:131-137, 2011
- 田中あけみ:ムコ多糖症UPDATE:138-145, 2011
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